自身の力で同志を集め、ともにコミュニティの中で変化を起こしたいと考える大学生を対象に、ちゃぶじょが2020年4月に始動した「ちゃぶじょチェンジ・リーダー・プログラム(以下CLP)」。同プログラムでは、コーチングやワークショップ、勉強会などを通じて、集ったチェンジ・リーダーたちが「変化を起こす力」を身に着けるためのサポートをしてきました。
この度、ちゃぶじょデジタルチームは、約1年間のプログラムを駆け抜けたチェンジ・リーダーたちに、プログラムを振り返ってもらうインタビューを実施しました。本記事では、一橋大学の西良朋也さんのお話をご紹介します!
●インタビュイープロフィール

西良朋也(にしらともや)
一橋大学社会学研究科研究科博士後期課程1年
一橋大学を拠点とするBridge For Allで活動してきた。研究テーマは、ダイバーシダイバーシティがどう人々に理解されているのかについて。
——CLPでは、他大学の学生さんからエンパワーされながら活動を進める中で、「一人ではない」と思えた
Q. CLPに応募したきっかけを教えてください。
A. Bridge for All は1年前の2020年に何人かの友人と一緒に設立した団体で、ちょうどこれからちゃんと団体にしていきたいと思っていたところでした。ちゃぶじょのCLPコーディネーターのかなこさんと交流があり、最初はコミットメントに不安があったのですが、ちゃぶじょは憧れの団体で、そこでいろんな繋がりを得たり、ノウハウを学べるということで、団体のためにも参加を考えました。当時はコミュニティ・オーガナイジング(以下「CO」)という言葉すら知らず、具体的なイメージもなかったのですが、ちゃぶじょはアクションを起こしてきたし、知名度もあるので、その運動の中で培われたものがあるんだろうと思い、そのノウハウを僕たちの団体にも活かしたいと思って応募しました。
Q. CLPから得られた学びや、プログラム中の困難などはありましたか?
A. COの手法は僕にすごく合っていて、学べて良かったと思っています。今までBridge for Allの活動では一橋内部のことしか視野になかったのですが、CLPでは他の学生団体の方々と伴走しているような感覚を得ることができて、その人たちの団体がどう動いているのか、その感覚を共有することができました。その大きな動きの中に自分たちの団体が位置付けられているんだ、と思った時に、「一人じゃない」という感覚がすごくありました。他の大学の方々に常にエンパワーされながら活動を進めることができました。
——今まではふんわりとしていた自分のリーダーシップ像が、より鮮明に言語化され、そこにもっとコミットしたいと思えるようになった。
Q: COを学んだり実践していったりする過程で、どのような学びがありましたか?
A: CLPに参加する前は、漠然と活動していました。運動論を体型立てて学んだことがなかったので、自分がやりたいと思ったことを試行錯誤をしながら、がむしゃらに活動していたんです。CLPでは、COというフレームワークを通じて、戦略的に進めることを学びました。例えば、この理想の形と現実の乖離がこうあるから、こうやってそのギャップを埋めようとか、そういうことが見えるようになりました。また、コーチングのおかげで、団体としてのマイルストーンが立てやすかったということも学びです。
自分の成長という意味でいうと、自分がどういう人間なのか、どういうリーダーなのか、今まではよく分からなかったんです。ワーッと率いる時もあれば、たまに疲れて周りに助けられるような時もある二面的なリーダーだと思っていました。しかし、COを通して「スノーフレークリーダーシップ」*について知り、自分のやりたいこととみんなのやりたいことが、スノーフレークのような形で繋がるのがいいと学びました。その中で、COの取り入れている「コーディネーター」**としてのリーダーの役割は、各メンバー自身のリーダーシップが成長しやすい環境を作ることだと知りました。この説明によって、自分がそれまで抱いていた自分のリーダーシップ像をより鮮明に言語化することができただけでなく、そこにもっとコミットしたいとも思えるようになりました。リーダーシップは、会社や他の団体だけでなく、もしかしたら友人関係でも発揮できるスキルだと思うので、これからも活かしていける大きい財産だと思っています。
*雪の結晶のようにリーダーシップが広がっていくこと
**チームでの調整をしたり、チームメンバーをコーチングしたりすることで、チームが目標に近づいているか確認する役割のこと
——僕もチームリーダーも、一緒に成長していけるのが嬉しい
Q. CLPに参加して、Bridge for Allに変化はありましたか?
A. 一番大きく変わったのは、人数が増えて、チーム制になったことです。以前は分散型のリーダーシップで、たまに活動内容を共有しながらぼちぼち進んでいたのですが、CLPに参加してから、スノーフレークの第一層・第二層というチームを作ることができました。僕はコーディネーターとして、一つ一つの具体的な仕事には口を出したり、細かい指示をしたりしません。各チームのミーティングで自分たちがどうしたいかを挙げて、みんながいる全体会議でなるべく対等な立場で話すような、ボトムアップであり、スノーフレーク的な組織を作れたのが良かったと思っています。僕も含めて、一人一人のチームリーダーが一緒に成長していけることが嬉しいです。
——藁にもすがる思いの状態だったときに入ってくれたメンバーが、そこまで情熱を持ってバトンを引き継ぎたいと思ってくれたことが嬉しかった
Q: COを学んでいたからこそ乗り越えられた困難や、成功体験のエピソードなどもしあれば教えてください。
A: CLPに参加した当時はメンバーが3人しかいなくて、潰れる団体だと思っていまいた。修士論文や大学院の入試もあり、心の余裕がなかったことに加えて、団体としてあまりインパクトが与えられていないことからストレスが溜まっていました。いつ辞めようか考えていたし、活動を続けることが難しくなったらCLPも辞めざるを得ないと思って参加していました。メンバー自体も少なかったこともあり、いつかは団体も回らなくなるだろう、と半ば諦めていたところ、解決策として1人1人に声がけをしてメンバーをあつめるといいというアドバイスをコーチングでもらいました。初めから諦めてしまわずに声がけを始めることで、実際にメンバーが集まり始めました。
人が入ってくれたことはもちろん嬉しかったのですが、その続きの話ですごく嬉しかったのは、リーダーシップが育ったことです。僕が忙しくなって活動できなくなりつつあり、僕の後任をどうしようと他のメンバーと話していた時期に、CLP期間中に僕が「1on1の関係構築」***をしてリクルートしたメンバーが、「自分がリーダーをやるのでゆっくり休んでください」と言ってくれたんです。その方はチームのメンバーとして活動していたのですが、もう一つチームを作ろうという話になった時にリーダーをやりたいと言ってくれました。藁にもすがる思いの状態だったときに入ってくださった方が、そこまで情熱を持ってバトンを引き継ぎたいと思ってくれたことが本当に嬉しかったです。さらに、新たなチームが立ち上がってからは、どんどんそのチームで「こういうことやりたい!」などのアイデアが花開きました。
Q: リクルートした方がそこまでコミットしたいと思えるような組織になったのはなぜだと思いますか?
A: 僕がただ、あれをやれこれをやれと指示するドットリーダーシップだと、主体性が生まれません。とりあえず与えられた仕事をやろうとは思えても、言われた仕事を消化していくだけで、自分からコミットしようという主体性は生まれなかったと思います。COのスノーフレークリーダーシップを取り入れたことで、自分たちがやりたいことを思いついた時にちゃんと声が聞かれる組織になり、そして各チームのやりたいことが組織全体のやりたいことに結びつくことで、自分たちがやりたいことが意味のあることだと実感することができます。自主性を持ちながら、主体的に、個人としてチームに貢献する。そして、小チームが主体的に動くことで大チームに貢献していく。COを取り入れることによって、そういう主体性が生まれやすい組織になりました。
***1対1で価値観や関心を交換することで、関係をより強くするプロセスのこと
今後の活動について
Q. 今後、ともやさんはどんな活動をしていく予定ですか?
A. Bridge for Allは次の代表に任せて、僕は半歩下がってコーチングという形で関わろうと思っています。新しい代表の下では、一橋学内への発信に力を入れたいと聞いています。ワークショップなど、手にとって効果が見えやすいものを中心に取り組んでいきたいです。
——正解とかゴールがみえてる一歩じゃなくても、なんでもいいから自分なりの一歩を踏み出してみるのが大事
Q. 最後に、これからキャンパス内で活動を始めたいと思っている学生へのメッセージをお願いします!
A. 今この記事を読んでくださっている方の中には、何かをしてみたいけど、アクティビズムや学生運動はハードルが高いと思っている方もいるかもしれません。自分はそこまでできない…と思うかもしれません。僕もそうだったのですが、Bridge for Allのメンバーや周りの人など、みんなの支援があって初めて一年間活動することができました。補い合って初めて一つのチームになると思うのですが、それを実現するためのひとつの手法がCOです。
何かを始めたいと思う時に、ゼロからだと大変かもしれないが、とっかかりになるような一歩——CLPかもしれないし、そうじゃないかもしれない——なんでもいいからその一歩を積み上げていけば、自分一人では達成できなくても人は集まってくるし、自分の足りないところも補って助けてくれる人がいます。Bridge for Allも3人から始まってここまできたので、正解とかゴールが見えている一歩じゃなくても、なんでもいいから自分なりの一歩を踏み出してみるのが大事だと思います。
**************
クラウドファンディングのお知らせ
先年度、ちゃぶじょは第1回「チェンジ・リーダー・プログラム1.0」を開催しましたが、おかげさまで、今年度、構成や内容をさらにパワーアップさせたCLP2.0を開催する運びとなりました!
CLP2.0では、CLP1.0でもベースとしていた「コミュニティ・オーガナイジング(CO)」の手法を中心に、参加学生ひとりひとりがリーダーとして自分のコミュニティから構造的変化を起こす術を知り、行動へ移せるよう、伴走をします。プログラム全体をPhase 1(スクール形式)とPhase 2(実践形式)に分け、座学と実践の2つの方向から性暴力・性差別をなくすアクションを起こすために必要なマインドセット、知識、スキルを学ぶカリキュラムとなっています。詳しいセッション内容としては、ジェンダー・セクシュアリティ、LGBTQ+・SOGIE、構造的差別、アクションの起こし方などを予定しています。Phase 1の参加者のうち、さらにキャンペーンに参加したい10校の方に、Phase 2へ参加してもらうことを想定しています。プログラム終了時のゴールとして、それらの10校において、性差別・性暴力をなくしたいチームが立ち上がり、キャンペーンが始まっている状態を目指します。
私たち、ちゃぶ台返し女子アクションの活動は、みなさんの温かいご支援で成り立っています。もしプログラムのビジョンにご賛同いただけましたら、少しでもご支援をいただけると、性暴力と性差別のない社会へとさらに大きく歩みを進めることができます。自分たちのコミュニティから、性差別・性暴力のない社会を作っていきたい、みんなが心地よく暮らせるようアクションを起こしていきたい!という思いを持った学生たちを、ぜひ一緒に応援してくださいませんか?7月17日〜8月31日の間に、*こちらのページ*からご支援いただけます。
どうぞよろしくお願いします!